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重曹での歯磨きは危険?一時的なメリットと長期使用の危険性。

近年、自然派のライフスタイルが広がる中で、家庭で簡単に手に入る「重曹」を美容や健康に応用する動きが注目されています。特に歯磨きに重曹を使うことで、ホワイトニング効果や口臭予防が期待されるとSNSなどで取り上げられ、その手軽さと低コストが大きな魅力となっています。料理や掃除にも使える重曹が、なぜ歯磨きにも良いと言われているのか? その背景には、重曹の特有の化学的性質があります。

しかし、歯に対して適切に使わない場合、その効果よりもリスクの方が大きくなることが知られています。この記事では、重曹を使った歯磨きのメリットだけでなく、危険性や、歯科医師からの警告について詳しく解説していきます。

重曹とは?その成分と作用

重曹は「炭酸水素ナトリウム」とも呼ばれ、化学式ではNaHCO3で表される弱アルカリ性の化合物です。料理や掃除、消臭剤として使われるだけでなく、薬用としても古くから利用されてきました。

歯磨きに使う理由としては、以下の2つの特性が挙げられます。

  • 研磨作用:重曹の粒子は微細であり、歯の表面に付着した汚れ(ステイン)を物理的にこすり落とす効果があります。これにより、歯が短期間で白く見えるようになることが期待されます。
  • 中和作用:重曹は酸を中和するため、口腔内の酸性環境をアルカリ性に調整し、歯のエナメル質を守るとも言われています。この点が、酸による歯の劣化を防ぎ、口臭予防にも役立つと考えられています。

これらの性質により、重曹は「ナチュラルなホワイトニング剤」として人気を集めていますが、長期的に見ると問題も多いのです。

重曹を使った歯磨きのメリット

まず、重曹で歯を磨くことのメリットについて考えてみましょう。実際に多くの人がその効果を感じているため、以下のような利点があることは確かです。

ホワイトニング効果

重曹を使った歯磨きの最も一般的な目的は、ホワイトニングです。歯の表面に付着した飲食物による着色汚れ(コーヒー、紅茶、ワインなど)を物理的に除去することができます。歯のエナメル質に直接作用することで、歯を白くする効果が短期間で得られるため、即効性を求める人々に好まれています。

口臭予防

口臭の主な原因は口腔内の酸性環境です。重曹のアルカリ性は、酸性を中和する作用があり、口臭を抑える効果が期待されています。特に、食後や朝起きた時の口臭が気になる人には、重曹での歯磨きが一時的な解決策となることがあります。

手軽で低コスト

重曹は安価で、日常生活でも多用途に使えるため、特別なケア製品を購入する必要がないという点が魅力です。市販のホワイトニング製品に比べてコストを抑えたい人には、重曹は非常に経済的な選択肢といえるでしょう。

重曹で歯を磨く際の危険性

重曹での歯磨きには確かにメリットがありますが、同時に多くのリスクが伴います。特に長期的な使用には注意が必要です。以下は、重曹による歯磨きの主な危険性です。

エナメル質へのダメージ

重曹は微細な粒子で研磨作用を持っていますが、この作用は歯の表面にあるエナメル質にも影響を及ぼします。エナメル質は歯の最外層で、酸や物理的刺激から歯を守る役割を果たしていますが、一度損傷すると修復することができません。

重曹の研磨作用が強すぎるため、長期間使用するとエナメル質が薄くなり、歯が黄ばんで見えることもあります。これは、エナメル質が失われた結果、内側の象牙質が透けて見えるからです。

知覚過敏のリスク

エナメル質が削られると、歯の内側の象牙質が露出しやすくなります。象牙質は外部刺激に対して敏感であり、冷たい飲み物や熱い食べ物、酸性の食品に触れると強い痛みを感じる「知覚過敏」が発生します。重曹を頻繁に使用することでエナメル質が徐々に摩耗し、知覚過敏のリスクが高まることが懸念されます。

歯茎への影響

重曹の強いアルカリ性が歯茎にも影響を及ぼす可能性があります。歯茎は非常にデリケートな組織であり、強い刺激を与えることで炎症を引き起こすリスクがあります。重曹の粒子が硬いため、歯茎を傷つけることもあり、出血や炎症を招く可能性があります。

口腔内のバランスを崩すリスク

口腔内の健康は、バクテリアや酸、アルカリ性物質の微妙なバランスに依存しています。重曹を頻繁に使用することで、口腔内のpHバランスが崩れ、善玉菌と悪玉菌のバランスが乱れる可能性があります。これにより、虫歯や歯周病のリスクが増大することがあります。

アルカリ性の重曹が細菌を殺すと期待されるかもしれませんが、実際には悪玉菌が増える可能性もあります。

歯科医は重曹の使用を推奨するか?

歯科医の多くは、重曹での歯磨きを危険視しています。短期間での使用や一時的なホワイトニング効果を狙う場合には問題がないこともありますが、長期間にわたる使用は、エナメル質の摩耗や知覚過敏のリスクが高まるため、推奨されません。

実際、歯科医院で使用されるホワイトニング製品や歯磨き粉には、安全性と効果が臨床的に証明された成分が含まれています。これに対して重曹は、歯科治療の観点からは「強すぎる」研磨剤と見なされており、その使用には十分な注意が必要です。

安全にホワイトニングを行う方法

ホワイトニングを望むのであれば、重曹のようにリスクを伴う方法よりも、安全かつ効果的な選択肢を検討することが重要です。以下は、歯科医が推奨する安全なホワイトニング方法です。

市販のホワイトニング歯磨き粉

市販のホワイトニング歯磨き粉には、重曹に比べて非常に細かい研磨剤が含まれており、歯を傷つけずに汚れを落とすことができます。また、過酸化水素やフッ素が配合されているため、歯を白くしながらエナメル質を守る働きもあります。

歯科医院でのホワイトニング治療

歯科医院では、専門的なホワイトニングトリートメントが提供されています。これらのトリートメントは、エナメル質を保護しながら安全に歯を白くする効果があり、歯科医の指導のもとで施術が行われるため、リスクが最小限に抑えられます。

ホワイトニングジェルやストリップ

自宅で使用できるホワイトニングジェルやストリップも市販されています。これらは、過酸化水素やカルバミドペルオキシドなどの成分を含んでおり、エナメル質を守りながら効果的に歯を白くすることができます。

まとめ

重曹での歯磨きは、一時的なホワイトニング効果や口臭予防に役立つ場合がありますが、長期的にはエナメル質の損傷や知覚過敏、口腔内のバランスの乱れなどのリスクが高まるため、あまり推奨できません。

ホワイトニングを望む場合には、安全性が確保された市販のホワイトニング製品や歯科医によるケアを選ぶ方が、より効果的でリスクも少ない選択肢です。

歯の健康を長期間保つためにも、重曹に頼りすぎず、正しいケアを心がけましょう。

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